
2026/07/07 家づくりのこと

32才タロー|後悔しない!夫婦で学ぶ、家づくり物語
第1章 「家賃を払い続けるのがもったいない」と思った日
登場人物
タロー(32歳)
会社員。年収400万円。趣味はゲームとパチンコ。家づくりの知識はほとんどなく、「まだ先の話」と思っている。
ハナコ(30歳)
子育てのため休職中。趣味は国内ドラマと韓国ドラマを見ること。アマプラとネトフリは ほぼ制覇している。家計を預かり、将来への不安を少しずつ感じ始めている。
イチロー(4歳)
とにかく元気。家の中を走り回るのが大好きなやんちゃ坊主。
ここから物語が始まります。
「イチロー!走っちゃダメ!」
今日もハナコの声がアパートに響きます。
ドンドン、ドタドタ。
リビングを元気いっぱい走り回るイチロー。
楽しそうに笑う姿を見ると叱るのもかわいそうですが、下の階に住む人のことを考えると放っておくわけにもいきません。
「静かにね。」
そう言って抱き上げても、30秒後にはまた走り出します。
これが最近の毎日の光景でした。
タローたち家族が住んでいるのは、新潟市内の築20年ほどの2LDKアパート。
家賃は月8万円。
決して住みにくいわけではありません。
スーパーも近い。
保育園も近い。
会社まで車で20分。
生活するには十分便利な場所です。
結婚したばかりの頃は、この部屋で十分満足していました。
「ここで何年か暮らそう。」
そんな気持ちで借りた部屋でした。
しかし、イチローが生まれてから生活は大きく変わります。
おもちゃは増え、ベビーカーや三輪車も置き場に困るようになりました。
洗濯物も増えました。
そして何より、子どもはじっとしていてくれません。
ハナコは毎日、「静かにね」と言う回数がどんどん増えていました。
金曜日の夜。
仕事から帰ってきたタローは、夕食を食べ終えるとソファに寝転びました。
「今日は疲れたな。」
少し横になったあと、むくっと起き上がり、プレステでゲームを始めます。
休日にはパチンコへ行くこともありますが、平日はゲームが一番の息抜きです。
ハナコはイチローを寝かしつけながら韓国ドラマを見ています。
お気に入りの俳優が出てくるシーンになると、自然と笑顔になります。
ようやくイチローが寝ると、二人だけの静かな時間が始まりました。
「ねえ。」
ハナコが口を開きます。
「来月、アパート更新だね。」
「ああ、そうか。」
「もう5年になるんだね。」
結婚してから、あっという間の5年間でした。
仕事。
出産。
子育て。
毎日が忙しく、家のことをゆっくり考える余裕はありませんでした。
「そういえばさ。」
タローがスマートフォンを見ながら言います。
「この家賃って、あと20年払ったらいくらになるんだろう。」
電卓を開きました。
8万円×12か月×20年。
1,920万円。
「えっ?」
ハナコは思わず画面をのぞき込みます。
「そんなになるの?」
「俺もびっくりした。」
もちろん賃貸には賃貸の良さがあります。
設備が壊れたら大家さんが対応してくれることも多いですし、引っ越しもしやすい。
だから賃貸が悪いという話ではありません。
それでも約2,000万円という数字を見ると、二人とも考え込んでしまいました。
「でも、家なんて高いよね。」
ハナコが言います。
「俺の年収400万円だし。」
タローは苦笑いしました。
テレビやインターネットでは、
「住宅価格高騰。」
「資材価格上昇。」
そんなニュースばかりです。
「俺たちには無理じゃない?」
それがタローの正直な気持ちでした。
翌日の土曜日。
イチローを連れて近くのショッピングモールへ買い物に出かけました。
帰り道、大きな住宅展示場の前を通ります。
立派なモデルハウスが何棟も並んでいます。
ハナコが言いました。
「見るだけ見てみる?」
「営業されそうだけど。」
「見るだけならいいじゃない。」
「まあ、それもそうか。」
軽い気持ちで車を展示場へ向けました。
最初に入ったモデルハウス。
玄関を開けた瞬間、二人とも言葉を失いました。
「広い……。」
開放感のあるリビング。
大きな窓。
おしゃれな照明。
広いキッチン。
イチローは嬉しそうに走り回っています。
もちろん誰にも「静かに!」と言われません。
ハナコはその姿を見て、少し目が潤みました。
「こんなふうに遊ばせてあげられたらいいな。」
その一言に、タローは何も返せませんでした。
営業担当者が笑顔で話しかけます。
「ご予算はどのくらいでお考えですか?」
タローとハナコは顔を見合わせます。
「えっと……。」
予算なんて考えたこともありません。
住宅ローンも分かりません。
土地もありません。
何から始めればいいのかさえ分からないのです。
営業担当者は丁寧に説明してくれました。
建物の価格。
土地の価格。
付帯工事。
外構工事。
諸費用。
住宅ローン。
聞いたことのない言葉が次々と出てきます。
二人の頭の中は、あっという間にいっぱいになりました。

さっぱりわからない、この人にまかせようか、いい人そうだし・・・
帰りの車の中。
イチローはチャイルドシートでぐっすり眠っています。
しばらく無言が続きました。
「どうだった?」
ハナコが聞きます。
「すごかった。」
「うん。」
「でも……。」
「何が正解なのか、全然分からない。」
その言葉にハナコもうなずきます。
家は欲しい。
でも、自分たちにも建てられるのだろうか。
年収400万円で、本当に無理なく返していけるのだろうか。
子育てが落ち着いたらハナコは仕事に復帰する予定ですが、それでも不安は消えません。
その日の夜。
イチローが眠ったあと、ハナコはスマートフォンで「家づくり」と検索してみました。
すると、住宅会社のランキングや、おしゃれな施工事例、住宅ローンの情報などが次々に表示されます。
見れば見るほど情報は増えます。
しかし、不思議なことに安心するどころか、何を信じればいいのか分からなくなってしまいました。
そのとき、ある記事の一文が目に留まります。
「家づくりは、住宅会社を探すことから始めるのではありません。家族がどんな暮らしをしたいかを考えることから始まります。」
ハナコはその言葉をタローに見せました。
二人は顔を見合わせます。
家を建てることばかり考えていました。
でも、本当に考えなければならないのは、その家でどんな毎日を送りたいのか。
そのことに、ようやく気づき始めたのでした。
こうして、タロー一家の家づくりが静かに始まりました。
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